がんは、本来は健康な細胞の遺伝子が何らかの原因で傷つき、設計図が壊れてしまって起こります。遺伝子による設計図には、その細胞の寿命も記されているのですが、そこが壊れているので細胞は死ぬことができません。細胞死(アポトーシス)が破綻し無限に増殖と分裂を繰り返すのが、がん細胞の特徴です。
がんによってなぜ人は死に至るのでしょう。
無限に増殖するがん細胞が周囲の臓器を圧迫して機能を損ない、またがん細胞自体が独自の血管を新生して体から大量の栄養を奪ってしまうためです。
がんが肺にできれば呼吸機能が阻害され、胃にできれば消化機能に支障が起き、肝臓にできれば解毒や栄養の貯蔵もうまくできなくなります。これらは、大きくなったがんが臓器を圧迫することが原因のようです。
それでは、なぜがんは起こるのでしょうか。
細胞の遺伝子の傷(突然変異)が原因とされています。どうして遺伝子に傷がつくのか、誰が傷をつけるのかというと、活性酸素が犯人であるという説が有力のようです。活性酸素の多くは、細胞内でエネルギーを生産しているミトコンドリアから出てきたものです。ミトコンドリアの活性が落ち、酸素などを使ったエネルギー生産がうまく機能しなくなると、電子が不安定になった酸素(活性酸素)がたくさんできて細胞内に侵出するのです。それが細胞の遺伝子を傷つけ、がん化の原因となるならば、悪いのはミトコンドリアです。ミトコンドリアといっても、衰えて活性を失ったミトコンドリアですね。
最近の研究では、活性を失ったミトコンドリアが生み出す活性酸素の影響で、がん細胞が転移する能力を獲得することがわかってきたそうです。